+- Prologue -+
【 2 】
***
「薔薇が見頃だな。」
月の光を浴びる薔薇たちを眺め、
スッと目を細める一人の女性。
この女性こそ、現・城主「ローザ=エルスハイマー」である。
かつては彼女の父が王であったが、
生涯を全うし数年前に他界。
母はローザが幼い頃に病死していた。
「ローザという名は、
"薔薇のように、美しく気高くあって欲しい"
という願いを込めて付けられたらしい。」
と、後に彼女は語る。
その名の通り、成長したローザはとても美しかった。
艶やかな黒髪に絹のような肌…
国中の男達が夢中になるほどの美貌であった事は言うまでもない。
しかしながら、
かつて反逆を目論む者がいた時、
その冷ややかな美しい瞳で一瞥しただけで逆らう者はいなくなった――
いや、
城から帰ってくる事は無かった、
との噂も。
あくまで噂、であるが。
***
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