+- Prologue -+
【 2 】
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「今日はいい天気ね。」
皆楽しそう、とひとりの女性が目を細めた。
丁度見頃となった庭一面の薔薇。
朝露に陽の光が反射してキラキラと輝いている。
彼女の名は「フィーネ」。この城に住まう姫君だ。
出生については謎に包まれており、
彼女に仕える侍女たちにも知るものは居ない。
ただ一人、侍女長である私を除いては。
人形と見紛う程の愛らしさ、
あどけなさを残した顔に成熟した身体。
惹かれる者は少ない筈も無く。
その姿を一目見ようと彼女への謁見の申し込みは後を絶たない。
そしてその申し込みをフィーネが断る事は無かった。
何故なら、彼女には理由と目的があったから。
「昨日の彼はどうしたのかしら…」
今朝方、逃げるようにして去っていった事を知ってか知らずか、
姫様は悪びれる素振りも無く呟いた。
***
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